変わり玉記録帳

日記・文章を載せる場所。個人文章道場も兼ねる。脳みそ断片保管庫宇宙本部。

賃貸住まいのプリンセス

お姫様兼妖精兼魔法使い兼猫兼幼稚園の先生になりたかった強欲な私は、幼稚園のお昼休みは先生に誘われない限り、たった一人で教室の中に残って姫としてみんながドッヂボールをして遊んでいるのを眺めていた。

(兼の字って並べるとゲジゲジした虫みたいで気持ち悪いな)

 


園の先生方が縫ったおままごと用のスカートを重ね穿きして、肩にはその辺にあった謎の布をかける。一応ドレスだ。

 


姫は優雅に時を過ごすので、基本遅刻して登園していたが、余裕のある日は必ずふりふりのブラウスに紺のキュロットスカートを選んで、カジュアル派の母に嫌な顔をされていた。

 


私の姫プレイに付き合わされていた母と幼稚園の先生、本当にごめんなさい。

毎日遅刻をすると言われても、まじで時間がやばくて禁止されている自転車登園を余儀なくされる日でも、必ずアニメを見ていました。

姫として、一度決めたことは曲げない強い意志を持たなければならなかったので。

 


卒園時にはだいぶ姫感も抜けてきて、将来の夢も猫兼魔法使い兼幼稚園の先生兼漫画家、くらいには現実世界を生きられるようになった。

 


そして姫をやり過ぎた反動か、女の子らしい振る舞いをとても恥ずかしく思うようになり、伸ばしていた髪をばっさりショートにし、ズボンしか穿かない子供になった。

 


将来の夢は学校の先生兼漫画家兼お母さんという、兼任するのはハードすぎて過労死するが、どれも努力次第で形になるものになる。

 


まあそんなこんなでどんどんガサツな性格になり、着るものもデニムにパーカー。

毎日ジャージで運動に精を出しまくる高校生の頃には、将来の夢も学校の先生に固まった。

 


小学校に上がるくらいに姫は気付いてしまったんだよね。

自分の顔がみんなと比べてまるで整っていない事や、身体ががっしりしていて純白のグローブなんかとても似合わない事に。

しょうたくんはさえちゃんを好きな事に。

 


姫を拗らせてたかと思えば、幼くしてブスとデブを、そして女を拗らせたのだ。

 


ジュニアブランドで身を固めて可愛くヘアアレンジをしている子たちと私は違う。

それに私はクラスの中で真ん中にいないから、AちゃんをBちゃんに取られた時だけCちゃんは「一緒に帰ろう」と誘ってくる。リレーの補欠の補欠みたいなものか。

 


まあ可愛くないし、おしゃれじゃないし、足は遅いし、ピアノも習ってないし、塾にも行ってないし、家も所帯じみてるし、一緒にいても中途半端だし当たり前だよな。

 


あと、みんなが追いかけてる「(小学校名)FC」の男子よりもメガネをかけたガリ勉が好きだし、そんなこと言えないし。

 


明るく振る舞うその実、めちゃくちゃに卑屈になって、それを打ち消すべくお笑いキャラに転向して今もスベり続けている。

 


姫様、姫様は将来三十路を目前にしても浮いた噂ひとつなく、小さい編プロで編集兼DTPのお仕事をなさるのですよ。