変わり玉記録帳

日記・文章を載せる場所。個人文章道場も兼ねる。脳みそ断片保管庫宇宙本部。

夢をこえた夢をこえた夢を見に夜へ

こんな夢を見た。 Sさんがくるりの岸田さんだった。(夢でよくある人物が変わったり重なったりするやつ……伝わるかな??)
私は、私なんだけど、頭の中に何人か分の記憶を持っているようだった。

動物園からの帰りの電車、日中動き回らない私たちはくたくたで、でも絶対食べる!と決めていたあんみつを平らげて、やっと電車に乗ってうつらうつらしているときだった。

私は努めて起きていようとしていた。「別に寝てていいよ、ほら、あの時だって」といった瞬間、ざぁっ、と私の頭の中に飛んだ。小さい頃の私がいた。
なぜそれをSさんが知っているかはわからない。
女の子の形のぬいぐるみの指を一本一本引っ張ってぐずって泣く私。
でも、少し様子がおかしい、私はそんなに愛らしく、守ってやりたくなるような、つい大人を惹きつけしまうだろう目で見つめられる子ではなかったし、ピンク色も好きではなかった。

「違う、それは私の(記憶)じゃない!!」

もう私たちは電車にいなかった。夢の中での「本当の私」が描いた絵や、クレヨンで引かれた線、ひっくり返った文字、それらが無造作に散らばる中、先程のぬいぐるみとは比べ物にならない、幼いタッチで描かれた、不細工で歪な体型、不揃いな目で丸い鼻をしていたショートカットの女の子とSさんが、「「じゃあ、泣こうか?」」と声を重ねた時、音楽が鳴って、私は別の場所にいた。涙が滲んだのが、コンプレックスである丸い鼻先が熱く赤くなることで分かった。

知らない立派な神社。結婚式が行われていた。新婦は綺麗な着物や帯で飾り立てられて、この世の贅を尽くした、と言っても過言ではないほどきらびやかだった。新郎は逞しく凛々しい男性だった。
どうやらそこは江戸時代で、今日はちょっとしたお武家様の婚礼の儀らしい。身分ごとに参列できる場所が違うようだった。

構わずSさんは歌っていた。

私は結婚式が滞りなく進むのを俯瞰していた。
ときどき「泣いてもいいよ」とか「僕の前で泣くことの何が悪いの?毎日は困るけど」みたいなフレーズを聞き取るごとに、レタスのような柔らかい植物の葉で包まれて、何かに守られる感覚、そして逆に自分がSさんにしがみついて、シャツの背中を握ってSさんを包んでいる感覚を、ふっ、と身体におぼえては失い、を繰り返していた。

絵の中の女の子とSさんの言葉通り、私はぼろぼろ泣いていた。

結婚式が行われている神社の奥に、細い道があるのが見えた。「あ。」
夢の中の人間は敏い。
その道が、結婚式に参列することを許されなかった人々の住む場所へ続いていることに気がついてしまった。

Sさんはなおも歌っている。

私はその細道を行こうとした……

ところで目が覚めた。

泣いていた。当たり前か。歌は聞いたことないけど上出来で、結婚式は映像の雰囲気的にPVのようだった。歌の世界に飛び込んだ感じ。(ちょっと加工されてたり、たまにカットが曲に合わせて上手く切り替わったり。今思えば絶対に変なことだが、参列者が踊りのような動きをすることもあった。)

夢は記憶の整理、というけれど、確かに今日は朝からたくさんのことがあった。

大学生活でずっと疑問やコンプレックスを感じていたことにまた悩み、昼はそれを荒ぶる感じでSさんにぶちまけ(打ち明け)た。
それ対して、3行ぐらいの、しかも片手で数え終わってしまう数の、優しいけれど、「確かにその通りである」と思える、"ほどほど"をきちんと守ったお返事をもらって※、アルバイトへ行った。海外からのお客様が多くぎこちない英語をたくさん喋り働いて、ナンパを変な感じでかわして帰ってきた。

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※「自分は考えを言葉にするのが苦手だ」と日々言っているけれど、むしろ上手だと私は思う。言葉少なに人を支えて、多くを語れる人って、そうはいないよ?少なくとも、私にはできないことだ。
一度手紙をもらってみたいけれど、「どんなに手紙をもらおうと、俺は基本手紙を書きません」と宣言されているので、諦めている。

ほどほど、はひどくない。
あの人のほどほどは、怠慢でも甘やかしでもないから。
私は、身の回りの事をなんでも重要事項にしてしまう。「その程度のことだったのか。じゃあ、もうそんなに気に病まなくてもいいのかもしれない。」と、思えるきっかけになるものが必要なときが、たくさんある。

今日もそうだった。いつもありがとう。
カッコつけだから、個人の問題の根っこは自分の力で見つけ、気づくべきだと思っているし、今まであんまり汚い部分は見せないようにしてきた、というかするようになっていった。

だから、ギリギリ溢れてダメになる寸前まで、自分の中でこねくり回す。

けれど今日はつらつら意見や思いを言ったあと、ウワー!っとその悩み事のタネに対してひどい言葉をいっぱいつかった。「私もなかなか汚いですよ。」という言葉を最後に添えて。

そうしたら、夜空に浮かぶ仲間の像に向かって敬礼する、ゆるいオリジナルキャラクターのスタンプが返ってきた。
ふるーい戦争映画とかで、親しい仲間を送り出した夜にやるような、アレ。
おそらく、健闘を祈られたようだ。

その汚い私を相手がどう受け止めたかとてもとても不安だったんだろう。それは、わかる。

今も不安だ。
もし、これでSさんが私に見出してくれていた、最後の「いいところ」がなくなってしまっていたとしたら、私たちは、「では、さようなら」である。

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話を戻す。
私の中に何人か分の記憶があった=気分の変調を表していた、のなら、それも、わかる。

でもなぜ、無理やり「違う!」といって、「夢の中での本当の私」にこだわったんだろう。いくつも記憶があるなら、どれが本当だかわからないし、上の「気分の変調を表している説」を取るなら、全て誠なり。ということもできよう。

そして舞台が結婚式だったのは?
中学時代のコーチが結婚するからかもしれない!

レタスに巻かれていたのは?
あ、これは聴いた友人の曲の一節が影響したのかも知れない!(今閃いた)

……しかしぬいぐるみの指を引っ張る私と、鼻を赤くする私は誰なんだ?

でも、うっすら憶えていたのは、指を引っ張る女の子の目の遣り方や仕草が、高校時代に、ずっと、どこかで勝手に劣等感を抱いていた子のそれに酷似していたこと。
私にないもの・反対のもの、全部持っているように見えた女の子のものだった。
当時の私は男の子みたいなショートカットだった。

最後、結婚式に呼ばれなかった人たちの顔を見る前に、目覚めたのはなんで?

そういえば、夢で実像を持って動いていた私の顔も見ていない。

夢は第3者視点で自分の動いているところや様子、顔が見えるなんていうけれど、そんなことはなく、電車の中ではいつも通りの会話をしていたし、何も話すことがないときは、ぼうっと車窓や中吊りを眺めていた。
ファンタジーな後半は、浮遊する透明人間のようだった。

謎多き夢。ぐるぐる忙しかった夢。

まだSさんは歌っている。いや、歌っていてほしくて、どうにか歌を思い出して、スピーカーになってもらっているというのが正しいか。

朝がくる。もう一度眠るために顔を洗うことにする。

眠りの見せる夢は尊い、タブーがない、自分の持てる想像力の総てを、誰にも邪魔されず自由に行使できる。

それくらい私にとって夢は大切なのだ。

だからみんな、お酒でも飲みながら、私と忘れられない夢の話をしよう。今度、絶対に。内容はなんだっていい。
あなたの見た夢であることが一番大事。

眠りの中見る夢を求めることは、きっと文学だ。