スマブラに負けた女
記録として。
ある夏、就職が決まって調子に乗っていた私は、急にこの先が不安になった。
(仕事は見つかって好きになれそう……3年は今のところで頑張るとして、私生活。……経済的にも精神的にも自立したい。……今の何も考えずにゆるゆる続いているこの恋愛は、よくない……!!!!)
といままで心に引っかかっていたものの、なんとなく先延ばしにしていたものについて、ついに向き合い始めたのだ。
友達にも相談したし、酒の勢いで偶然出会ったタロット占い師のオネエにも頼った。
みんな口を揃えて「別れるべきだ」とアドバイスしてくれて、一層(未練とか気持ちはあるけど、人生の選択としては、私間違ってないんだ)という思いを強く持つようになった。
最初は小さい事でもなにか引っかかることがあれば話し合って、常に問題解決してきたけど最近は全部なあなあであることも気になっていた。
「社会に出てからお互いの知らない事が増えて、話してみたところでどうにもならない事」が多いせいかと思ったけど、それならそれで「最近の違和感と怠慢について」と言う話合いが昔ならきっとあっただろう。
そういうものが積もり積もって
「かくかくしかじかで別れよう!!!」
と宣言したのであった。
で、3ヶ月待ってくれ、と言われて素直に3ヶ月待ち、この間話し合ってきたのである。
(私が言い出しっぺとはいえ、本当に縁が切れたらしばらくキッツいだろうな~~)
(誕生日忘れられてるの結構堪えたしなあ~~)
(いやしかし強くあらねばならぬ、言いたいことは言わねばならぬ)
心の戦闘部隊と守備部隊を全員配置させて、いざ。
普通に落ち合い、まさかまさかの誕生日プレゼントをもらい(質のいいバスタオルだった)、居酒屋でご飯を食べさせてもらってバッチリ誕生日の人扱いを受けてしまった。
正確な誕生日は一応覚えていたらしい。
そして決戦の地我が家へ。
「じゃあどうしましょう」
火蓋は切って落とされた!!
向こうは、ここ2年は転職を考えつつ働きたい、今動くと第二新卒とみなされ収入が減ってしまう。いまは準備をちゃんと進めたい。だから自分が生活やその他に変化を起こすのは転職後だと思う。
私、超 納得。
自分がクソみたいなリズムで社会を渡り歩いてきたせいで、真っ当な社会人の転職というものを全く理解、想像していなかったのだ。
(で、その間私のことはどうするの?自分のことに専念するから切るの?)
という疑問を抱きつつ、私のターン。
とんでもないネガティヴさを持ち合わせいるが故に、私という人間がいかに損害をもたらすか、夏に仕事が決まったのにすでに無職が確約されているレベルで社会的に覚束なさすぎる奴か、持病でいまどれだけ迷惑をかけているか、延命措置をしたところでどれだけ悲しい結末になるか、などを延々とプレゼンした。しまくった。
自分でも悲しくなるほど私のよくないところを挙げつらった。
向こうもだんまり私もだんまり。心の戦闘部隊も守備部隊も最初より明らかに数が減っている。戦死だ。死人が出ている。心が揺らいでいる証拠だ。カッコ悪くなる前に早く決着を……つけたい……。
「よし、じゃあ別れよう」
結構長めの無言、と「う〜〜ん」「でもなあ」「そうだよなあ」とかいうなんだか煮え切らない感じの声。
(あ、別れるのか、そっか。)
と思い、返事をしようとしたその時!!!
そこ(脳内)に現る、一人の影。
(これは!戦隊モノでよく見るちょっと遅れて出てくるミステリアスな奴だ! 敵か味方か分からないけど、なんか強いあいつに違いない……! 去り際になんかカッコいいこと言ってくれ!!)
(うあーん。 もう無理~~、カッコつけるのしんどい~~。理性的にまとめるのきつい~~本当のこと半分しか言ってない~~私たちのこと無視しないで~~!!)
やばい。一番来てほしくない奴が来た。こいつは「乙女心」と「素直な私」だ。
そいつらがCharaの曲をBGMに戦場へと駆け込んできた。
ちょっと待ってよ、いままでなるべく感情的にならないように話してきたじゃん? なんでこいつら来た??
そこから乙女心たちは猛威を振るい、場の空気を一気に変えた。
私は不満とその種のようなすぐに直せることはスラスラ言えるのだが、根っこにある不安はずっと言えなかった。
「パーカーがダサい」とか「筆箱が汚い」とか、「私といてもいいことはない。なぜなら~~」ということは言えても、「私が気にしなけば丸く収まる不安や恐れ」はずーっと言えていなかったのだ。
話合いちゃんとしてるし! と威張ってきたくせに、皮肉な話である。
いろいろあったけど、早く解決させたくて我慢してきたこと、カッコつけたくて無理してきたこと、そういったものを言わずしてスッキリさようならができようか!!!
と殴り込んできたのが乙女心と素直な私だったのだ。
そうして、ぽつぽつと、言葉に悩みながらではあるが、理屈と損得勘定ではどうにもしがたいことについてをはじめて伝えた。
結構長くなってきたので、乙女心と素直な私の戦いっぷりは省くけど、意地っ張りでプライドが高い私にしては上々だったと思う。
結果、
私→自分に自信がないし、関係を進めるのが怖いけど、でも嫌いになれない。関係を先に進めないことを前提で別れなくてなくて済むならそうしたい
S氏→特に私が邪魔になってることはないし、転職するまでは他の変化は望まない、だからお互いなにか引っかかって離れられないのなら、キャリアプラン的にも、心情的にもとりあえずあと2年、てところで折り合いをつけたい
ということでまとまった。
そして、
「じゃ、最近発売されたスマブラやるから」
と帰っていった。
ええええ~~
ええええ~~
ここ友達の話とか聞いてると死ぬほどいちゃつく展開じゃないの~~??
とは言わなかったけど、せめてもうちょっとうちにいようよと粘るも、やっぱりスマブラには勝てなかった。
とにかく切り替えが早い。落ち込むと長いくせに、いい方向に話がまとまればすぐに通常運転になる。
私なんか疲れてぼーっとしてたのに、あっち詰め将棋やってたし。
まあそんな感じで関係続行です。Twitterやブログ投稿するネタが確保されました。
向こうの口癖は
「もし○○の友達にいろいろ知れたら俺多分刺されるよー」
ですが、すでにネタにしまくってます。
あと、ちらっと
「いまはちょっと怒るかも知れないけど結局帰っても許すでしょ?」
と言ったのを私は聞き漏らしていません。ご愁傷様です。いつか刺されてください。
でも変な我慢をするのはもうするのやめよう、と思った。押し殺してもどんどん覇気がなくなって好きな私にはなれないし、ちりつもで爆発して乙女心たちが暴れるし。
そして案の定、痩せろと言われたので、きっちり痩せてスマブラに勝てるレベルになることが私生活での目標となりました。
「痩せるまでもうここには来ないよ?」
って、話がついた途端何様だてめえ、来てもうちの飯食って風呂入って寝て帰るだけじゃねえか!! と思ったけど、なにも言い返せなかった……。
太ったのは事実だし、「今年は痩せる」が付き合う上での私の公約だったし……。
なんか早速我慢してるような気がないでもないですが、以上、「泣けない女のやさしい気持ち」を解放して、それでもなおスマブラに負けた女からの報告は以上です。
私には本当に可愛げがないんだろうなあ。
追記:もらったシュークリームやけ食いしたらお腹壊しました。
当日は朝から私へのプレゼントを買い、午後は休日出勤、そして夜はこの話合い、明け方までスマブラとなかなかにハードな一日だったそうです。
仕事があるってわかった時点で話合い延期すればよかったな。長丁場になる事は想像つくし、仕事終わりに話したいような議題じゃないし、めちゃくちゃ負担かけちゃったなと反省しました。
もしも疲れていて、言いたい事を言い逃していたら、なにかを言わせてしまっていたら、それはとんでもない事だぞと。
早速やっちまった、と思っていますが、平和? は多分戻ってきそうです。
追記の追記:
それにしても、お付き合いを始めた始めの年は学校のこともバイトのこともバリバリこなしていて、いわゆる「ちゃんとした人」「将来性がありそうな人」と言われていた。
しかしいまはだいぶ変わってしまって、へろへろで、全然違う人のようになってしまったのに、そこは問題ではないらしい。
私が唯一自分のことが好きになれていた期間の私じゃなくなったいまは、どうにも力が入らなくて、人としての魅力はどんどんなくなっていっていると思うのだけど。
ただの調子乗りで、屁理屈をこねる人間は私なら相手にしたくないと思うだろうなー。
聞かなかったけど、いったい私のなにが彼を繋ぎ止めていて、彼のなにが私のどの部分に引っかかっているのか本当に不思議。
スマブラしてても怒らないから? 寝てても許すから? 知りたかったけど怖いから聞けなかった。
聞いたらそこばかり意識して、ぎこちない振る舞いになってしまいそうだし、嫌われたくない一心で「喜んでもらえそうな私」になりきろうとしそうだな、と思ったからである。
それは、私の中ではあんまり褒められた行為ではないし、かっこ悪いし、なによりいろんなものを狭めて、自分の他の部分を切り捨てる悲しい行為だ。
前にも書いた気がするが、個人的には「自分がいなくてもこの人はちゃんとやっていけるだろう」と、放っておける安心感と安定感を感じ取ってもらいたい。そこまでいってやっと自立したもの同士としてやっていける気がするから。
私がいきいき仕事をしていると、話が弾む傾向にある。多分、その辺りが鍵。ちゃんと人間をやるぞ。私自身を生きるぞ。もうちょっとで仕事ないけど。
可愛い顔で笑いかけられない代わりに、おっとりした調子で癒してあげられない代わりに、私が私のためにモリモリ活動しているところを見せつけたい。
数年前のこととはいえ、他にも魅力的な人がたくさん、街にもコミュニティにもいた。いまだってそうだ。
それでもなぜか、私を選んでくれたのだから、とにかく私は私を生きていくしかないのだ。
それが相手に応えるひとつの方法なのだとして進むことが、私の誠意であり愛情表現だと、したい。
可愛げがないと悩みつつも、私はきっと強い人になりたいんだね。
でも痩せて可愛くなるのも諦めちゃダメよ、ある意味強くないとダイエットは成功しないよ。
長いけど、そんな感じ。