変わり玉記録帳

日記・文章を載せる場所。個人文章道場も兼ねる。脳みそ断片保管庫宇宙本部。

ご飯が炊ける前に

本日のセンチメンタル。

 


豚もおだてりゃ木に登る。私は生粋の調子乗りで、褒められるとすぐに「よせやいよせやい」と照れつつも内心ガッツポーズしている。

 


でもお世辞や嘘は基本、好きではない。たとえそれが私を喜ばせるためのものであっても。

 

 

全部それを見抜けるか、と言ったら全然そんなことはない。調子乗りだからヘラヘラしてることもあると思う。

 


でも「なんか今の言葉変な感じ」と思うことも確かにあって、それは大概無理なお世辞や褒め言葉であることが多い。

 


昨日、「別れたら絶対に思い出すこと」として「サンタ最強童貞説」のことを書いたが、まだ思い出してしまうだろうことがあった。

 


それは「かぶのとろとろ炒め」と「中華風トマト炒め」だ。

どちらも私の好物である。

 


うちに遊びにくるときは、大抵私がぶきっちょな料理を作るが、たまに外でご飯を済ませることがある。

そのあと、TSUTAYAに寄ったりスーパーでお酒を買ったりして、あとは風呂に入るだけ、夜更かし決め込むぞ!  という気分の日。

 


最寄りの居酒屋でご飯を食べて、玄関を開けたら

「ご飯のにおいがする」

「ああ、今日の夜ご飯にしてもいいし、そうじゃなければ作り置きとして食べればいいから、空いた時間で作っておいたんです」

「うーん、家で食べてもよかったね」

「(私の食材であり食料だぞ)まあ、お腹空いた時にでも」

 


正直私もどっちでもよかったし、多分作り置きになるだろう、と思って私の好物だけを作っておいた。味噌汁もあったかな?

 


結局その日は映画を観て、そのまま昼まで寝て、起きたらお腹が空いていたからご飯を食べることにした。

 


実家住まいなんだから家で食えよ、という心の声を抑えつつ、でも手料理を振る舞うのはまんざらでもないんだよな……と、「かぶのとろとろ炒め」と「中華風トマト炒め」を出した。

 


私は嘘をつかれたくなかった。美味しくなければそう言ってほしかったし、普通なら普通、まずかったらまずい、と言ってくれ、とお願いした上でいつも料理を出していた。

 


その時点で過去出した料理を振り返る。

 


鶏肉のチーズはさみ焼きは失敗して、2人で脂っこい、これは失敗だ、とオエオエしながらなんとか食べた。

 


急ぎで作ることになった親子丼は特にリアクションがなかった。

 


実家時代に親の目をしのんでこっそり遊びにきた時に手料理をリクエストされ、焼うどんを作ったことがあったが、焦って作ったらべちゃっとしてしまった。

 


初めていまの家に来たとき、出だしが肝心と一汁三菜きちっと作ったら、「そんなに張り切らなくてよかったのに」と私の料理にあまり期待してないような台詞を吐かれた。多分焼うどんの記憶のせいだと思う。

 


だからさっきはまんざらでもない、と言ったけど、それはあくまでも付き合ってる人に料理を出す、という行為が「それっぽい」からワクワクするというだけであって、決して胃袋を掴んでやるぜ!  料理上手な私を見せつけるチャンスだぜ!  というわけではなかった。

 


「トマト炒めはラー油をかけた方が美味しい」

なるほど。

「かぶは……おいしいね。うん、かぶ、味が絡んでてうまい」

 


まじか!  クックパッドを見て、とにかく山ほどかぶが食べられそうな料理を選んで作ったこいつが当たりだったのか!!

 


かぶが好きでよく買っていたものの、味噌汁の具になるのがメインで、どうせだからレシピ新規開拓するか、と実験的に作ったものだった。

 


本当か嘘かわからないけど、多分本当寄りじゃなかったのかなあ、と思っている。

本音はぽつりという人だし。

 


それから、調子乗りの私は一人の時も「かぶのとろとろ炒め」をひたすらに作り、磨きをかけて、今ではすっかり得意料理になってしまった。

 


豚肉を使うと洗い物が面倒なので、もう全然作ってないけど。ちなみに鶏肉だとイマイチだった。

 


そうしてすっかり日付は忘れたが、その味がいいねときみが言ったから、「かぶのとろとろ炒め記念日」が制定されてしまった。

 


最初に書いたように、この料理は私の大好物だ。一人になっても作って食べるだろう。

その時に、私は母親以外に初めて料理を褒められたことを思い出すのだろうか。

 


トマト炒めにはラー油をかけるのだろうか。

 

そういえば、

「ハンバーグも作れるのぉ?」

と感心されたが、たった一度作ったきり、作っていない。洗い物が面倒だから。

 

きっとそうやって、「(一人で食べるとしても、いつか)食べさせてみたいもの」よりも「私の生活がより楽なもの」に料理もシフトしていくのだろう。

 

でも、一人メシのよさも私は知っている。野菜炒めのあまった汁かけ飯はお行儀はよくないけど大好きだ。

 

元をたどれば、かぶのとろとろ炒めも中華風トマト炒めも私が食べるために作ったのだった。

 

私はこれからも自分のためにご飯を作るのだ。