【後編】私もお嫁に行きたいのんー娶られ志願者の叫び
前の記事では、将来の不安やさみしい老後を憂うゆえ、婚活市場に乗り出すべきなのでは???
迫る時間、若さは限られてるぞ???
という旨を書いた。
でも、読んでくれてなおかつ私のことを知っている人はこう思っただろう。
(そうはいっても多分こいつは一般的な婚活は向いていないと思う……)
正直私もそう思う。合コンにさえ1回も言ったことのない女だ。
友達に半ば引っ張られるようにして入ったホストクラブは何が楽しいんだか正直分からなかった。
もっと具体的な話をすると、大学時代授業が被った男の子からアプローチを受け、なんだかとてもその人が嫌になってしまい逃げ回ったものの、なんやかやで「お出かけ」することになった。
結局その時は(会話がつまんない奴と出かけるの超嫌なんだけど)とストロングゼロのロング缶を2本飲み干して軽く頭をパッパラパーにして臨んだほどである。
その日は目的だった美術館を見終えてすぐ、相手を撒いて帰った。我ながら酷いと思う。
でもそれぐらい、「慣れない異性」、「突然迫ってくる異性」が苦手なのだ。もっというと話や行動がつまらない奴は贅沢を言うようで申し訳ないが勘弁願いたいのである。
それに、私は「すでにお互いが品定めをしあっている短期決戦」がめちゃくちゃ苦手である。
これは最初に書いた合コンに行ったことがない、にも通ずるところだと思う。
「お疲れ様です」しか言葉を交わさないような間柄から、丸3年をかけてどちらともなく好意を抱くようになって今があるという、ハイパー時間をかけた少女漫画のような恋愛しかしたことがない。
(連載最後のページに書かれる、「両想いハッピーエンドで完結!3年間応援ありがとうございました! 〇〇先生の次回作をお楽しみに!!」という文言が浮かんだのは私だけだろうか)
700文字を使って言いたいのは、
「今時間を与えられたところで、私はすぐに結婚を見据えた相手を探しに動き出せるのか」
ということだ。
私は人生で、よーし恋愛するぞー! という気持ちで生活したことがない。私の生活にもや~っと入ってくるような相手じゃないと、いや、入ってきてからやっと自分の心の異変に気が付くぐらいなのである。
しかもそれに気が付いても、知らんぷりをしたくて(なんか脳がバグ起こしただけだろ改修しとこ)と思ってその気持ちをどこかに追いやってしまう。
そういったことも婚活に向いていない1つの理由であるし、諸々に3年もかかった原因だと思う。その意味では、私の脳に白旗を上げさせた例の男は結構すごいのかもしれない。元から話面白かったし。
そう考えると、私の婚活は新しい誰かを探して狙いを定めにいくよりは、たとえ玉砕したとしても、肚を決めて今いる相手にとても丁寧な方法で仕掛けていくのが、一番いいのではないかと思う。
(ずっとこれが言いたかっただけでしょ)
自分の恥ずかしがり屋なところと屁理屈をこねまくるところにはいつも振り回されて疲れている。でももっと屁理屈をこねるので、私が素直にならざるを得ないことの多い相手だからここまで続いたのかもしれない。
そうそう、こういう「ああもう、じれったい」というのを見ているのが好きな人は内田百閒の「恋文」を読むことをお薦めする。若かりし頃の百閒翁が後に結婚する女性と実際にやり取りした手紙を、結婚するまで時系列にまとめたものである。
その手紙は私の文章以上にやきもきする。
「お前便せん何枚も使ってあれこれ書いてるけれど、要は『あなたのことめっちゃ好きですー!! また逢えたらいいなー! あ、僕のお勧めの本読んでほしいなー』って言いたいだけだろ!!!」
と思わせてくれる。でも同族としては、そんな偏屈で照れ屋な彼がどうやって結婚まで漕ぎつけたのか学ぶところがあるかもしれない。もう一度読み返そうか。
ちなみに例の男の誕生日と内田百閒の命日は同じだ。
こういうことを覚えてしまうのも、いかにも私って感じで、なにやらいろんなことを結び付けては、喜んだり不安になったりしてしまう、「おまじない体質」は横断歩道の白線だけを踏んで向こうへ渡れたらいいことがある、とひょこひょこ歩いていた小学生の頃と何も変わっていない。
婚活婚活言っているけれど、今まで怖くて言えなかったこと、考えられなかったこと、笑ってごまかしていたことにメスをいれただけだった。
だってまだ計画も作戦も何もない。
あるのは恐れと、少しの希望と、なんだかんだで揺るがなかった気持ちだけである。
本人を目の前にすると何も言えない。いつも「今じゃなくて次」、その次も「今じゃなくて次」。へらへらと、でも生真面目にさようならと言って別れる。バイバイなんて言ったことがない。
でも見送るのは姿だけではなかった。私にとって大切なことも見送り続けていた。
私は根っからのマイナス思考だ。心も弱い。後半に差し掛かるにつれて、最悪のことを想定してしまい、手が震えてミスタイプが増えている。
でも前回書いたように、何かで表現しないと考えていることは伝わらない。分かり合えない。
今、ゆっくりと私の中の詩を読み解いている。
周りは自分にとって特別な相手と長い時間を共に過ごすために結婚という方法をとっているけれど、もしかしたら他の方法もあるかもしれない。私は誰かのところに嫁ぐにはちょっと面倒な事も抱えているし。相手の家がまともならまともなだけ、言い出しにくいことだから、家と家が関わらない方法を探すのもいいかもしれない。
あらあら、すっかり最初の勢いは失せてしまった。弱った弱った。
ここまで悩ませやがって、ふざけるな。「愛憎相半ばする」とはこのことか。
ともかくまず取り組むべきは自分の気持ちの整理だ。ひょっとすると婚姻関係である必要はないのかもしれない、という考えまで出てきている。焦りは禁物だ。
でも焦らずゆっくりを、先延ばしにしてOKだ、と勘違いしてはいけない。今私がしっかり考えなければ、と思っているんだから、気が済むまで考えなければずっとぐるぐるするだけである。これはなんにでも言えることかもしれないけれど。
ちょうど「美人じゃない 魔法もない バカな君が好きさ」と流していた曲が唄った。
向こうが私のことを好いてくれているかは知る由もないが、美人じゃない、魔法もない、バカな私は、長期戦になっても、しっかり私なりの決着をつけにかかろうと思う。