うららかな日に生まれし君と「一番可愛いサボテン」 その3
さて、今回でいよいよ終わりです。いやー、我ながらなーがいながい。「その3」とか初めてですよ。さあ、「3つのサボテンの条件」の話とお手紙の内容がやっとこさ明らかになります。
どうぞ、終結を見守ってやってくださいませ。
以下前回の続きです。
①まるっぽくて、②指で触れても痛くないくらいとげがやさしくて、③いつも寝ぐせをつけていたSさんに似た、ちょっといびつな「クセ」がある、サボテン。
それをラッピングしてもらいましたが、土がこぼれて仕方がなかったのと、見栄えがあんまりよくなかったため、100均で、サボテンが植わっているプラスチックの鉢が収まるくらいのぐいのみと、ブリキ缶のバケツで、持ち運びやすく、割れにくいようにカスタマイズしました。
プレゼントへの執念恐るべし。相手の為の行為が、自分を生かす行為になってしまっている、典型例です。私はこのままでいいのでしょうか……。
とはいえ、これで物は完璧。あとは、お手紙。内容は秘密です。でも必ず決めていることは、安易で直接的な言葉は文字にしない、です。照れもありますが、同じく気持ちを伝えるならば、ファストフードみたいに、分かりやすいけれど、どこにでもあって、すぐに拵えられてしまうものよりも、一品一品、少しずつ箸をつけて食べていくうちに、じわじわとまとまって、完成されていく、ちょっと贅沢な料理のような文で、気持ちを伝えたいと思っているからです。
ただ、手紙の最初と最後に一首ずつ付けた、お粗末な短歌もどきは載せてみましょう。
ありがとね、 今日じゃなくても 言えること でもリボンをつけて 渡せるのは今日
はるをまたぐ なみだのあめに 傘さして 光っている場所 ほんのり見える
小さい頃の誕生日の写真には、必ず泣き顔を残していた私でした。何歳から笑って、おめでとうを受け止められるようになったかはもう分かりません。
不思議なことに、お付き合いを始めてから、必ずエイプリルフールには泣いています。上のことと関係はあるのでしょうか。そして、いつか泣かなくなる時が来るのでしょうか。
でも、今のところ、これからもよろしくね、と言えるような、温かい希望と、泣く必要のなんてない、やわらかいはるのひかりがあることにに気付かせてくれる人であることは、私の中で確かなのです。
そんな自分ルール、感情むき出しの手紙を、ラッピングバッグに入れて、ブス乙女は、贈り物を間違いなく届けるために、ハッピーバースデーのあなたが住む駅へ、そわそわどきどきしながら向かいました。
なぜこのプレゼントにしたかを、サボテンの秘密や、Tシャツの柄の理由をどう伝えようか考えながら。そして、細かいことをおぼえていたこと、いっぱい工夫をしたことを、褒めてもらえたらな、と膨らむ邪な気持ちと戦いながら。
ちなみにサボテンには、名前を付けてね、とお願いしました。「神話から取ってつけると思う」と言っていましたが、どうなるんでしょう。
法律では2週間以内に名前を決めなきゃいけないのですよ?
楽しみ楽しみ。できる限り、可愛がられてほしいな。にょきにょき育て、緑のぷくぷく。